日々

「伊藤雅風”history”展|於 tonoto」に寄せて

台湾・中国への茶旅では、古茶壺の収集に熱心な茶人に出会うことも少なくないのですが、彼らのコレクションの中に、古い常滑の急須を見つける事があります。その理由は常滑の赤土が水を柔らかくし、茶湯に豊かな変化を与えることにあるようです。

現在の常滑の朱泥急須はべんがらを混ぜた土を用いたものが大半を占めており、天然の赤土を用いて作られた本朱泥は非常に少なくなっています。雅風さんの急須作りで、まず注目するべきは、相当の時間をかけて古来の泥作りに取り組まれていることではないでしょうか。

はじめて雅風さんの朱泥の急須を目にした時、一目でその目の細かさに気づきましたが、実際に急須にお湯を注いだ時、壺の中から小さく聞こえてくる均一な泡音がとても印象的でした。この茶壺の呼吸音は雅風さんの丁寧な土作り、作家としての気骨を物語るものだと思います。

雅風さんの急須の造形には古茶壺への愛景が感じられます。実際に手に取り使ってみると、作家の工夫と研鑽の痕が感じ取れます。例えば一部のシリースでは、注ぎが一滴まで容易にコントロールできるように、工夫されています。蓋や持ち手のディテールの精度も高く、手馴染みします。雅風さんは焼きあがった作品を厳しい基準でチェックされており、品質が高く保たれています。

茶会などのシーンで、一滴の精度を求める場合がありますが、そのような時、雅風さんの急須が大きな安心感を与えてくれることは間違いありません。

伊藤雅風”history”展(於 tonoto)は12月1日まで開かれています。ちなみに雅風さんが個展を開かれるのは今の所、年に1回程度なのだそう。これだけの作品が一堂に会する機会は次早々にはありません。

ぜひトノトに足を運んで、実際の使用感をお試しになってみてください。30日は雅風さんも在廊を予定されているとのこと。その日は私も、渡邊さんの茶会のお手伝いの為にトノトにおりますので、気兼ねなくご質問ください。

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