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明治 グラヴュール羊歯文コップ(1868–1912CE)

Sale price7,749.00 THB

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本品は、明治時代に制作されたグラヴュール技法によるガラス製のコップで、器肌に繊細な羊歯文が彫り込まれています。わずかに緑味を帯びたガラス地は、ウランを微量に含有することで発色した、いわゆるウランガラスに属するもので、暗所でブラックライトを当てるとほのかに蛍光を発します。器胎には、製造時に混入した気泡や揺らぎが見られ、製造時の不均一さや素朴な仕上がりが、明治期のガラス製法を物語っています。

ガラスの肌にやわらかく刃をすべらせ、絵画のような陰刻を生み出すグラヴュールは、17世紀の西洋において発展した表現技法のひとつです。江戸切子のような幾何学的でシャープな線とは対照的に、グラヴュールは濃淡と奥行き、そして陰影を操ることで、柔らかな表情をガラスに与えることができます。この技法は明治初期、品川硝子製造所をはじめとする模範工場により日本へ導入され、熟練の職人たちによって国内に定着していきました。

羊歯は、長寿や子孫繁栄を象徴する縁起の良い植物であり、平安時代にはすでに文様として取り入れられ、和歌や蒔絵、染織など多くの工芸分野で親しまれてきました。興味深いことに、19世紀のヨーロッパでも、「プテリドマニア(羊歯熱)」と呼ばれる熱狂的な羊歯ブームが広がり、陶磁器や建築装飾、さらにはガラス器に至るまで、羊歯の意匠が氾濫しました。羊歯は、やがてジャポニスムやアール・ヌーヴォーの潮流とも響き合い、東西双方の美意識に通底する、稀有なモチーフと言えるでしょう。

彫り込まれた羊歯は、光を受ける角度によって陰影を変え、まるで器の内側から浮かび上がるように、柔らかな立体感をもって現れます。葉脈に至るまで克明に刻まれた線描には、単なる装飾を超えた観察と描写の意志が宿り、西洋由来の彫刻技術と日本的な象徴文様の組み合わせが、自然主義的精神と融合しています。

このようなガラス器が登場した背景には、文明開化の波がありました。食卓にビールやラムネ、氷菓子といった西洋的な嗜好が持ち込まれるにつれ、「コップ」と呼ばれる新しい器物が求められました。ガラスという透明で脆い素材は、近代という時代そのものを象徴する存在でもあり、そのなかに羊歯という伝統的な吉祥文様を刻むことは、日本の精神性と新たな生活文化とを結びつける、折衷的な工芸といえます。

現存状態も良好で、ガラス表面に大きな欠けや割れはなく、当時の空気を穏やかに留めています。

w6.9 x d6.9 x h8.8 cm

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明治 グラヴュール羊歯文コップ(1868–1912CE)
明治 グラヴュール羊歯文コップ(1868–1912CE) Sale price7,749.00 THB