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清代 梨皮泥急須 具輪珠(ぐりんだま)木箱付(1616–1911CE)

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本品は、清代中期から末期にかけて宜興窯で作られた紫砂急須「具輪珠(ぐりんだま)」です。小ぶりで掌に収まる壺身は、わずかに張りをもたせながらも丸みを帯び、太く短い直流の注口が、その緊張を和らげるかのように愛嬌を添えています。蓋は甲高に立ち上がり、宝珠形の鈕を戴き、その姿は仏塔の相輪珠を思わせる意匠で、静かに器全体を引き締めています。

器肌は「梨皮泥(りひでい)」と呼ばれる宜興特有の土を用い、細かな砂粒を多く含む胎土が、微細な凹凸と柔らかな光の陰影を生み出しています。淡い赤茶にやや黄味を帯びた発色は、光を受ける角度によって豊かに表情を変え、土味(つちみ)の奥にしっとりとした潤いを湛えます。

宜興の紫砂壺は、明代末期に文人たちの愛玩する茶器として隆盛を迎え、清代には技巧を極めますが、具輪珠はその流れとは一線を画し、日本独自の煎茶文化の美意識に応える形で生まれました。技巧の誇示を避け、素朴な中に密やかな品格を求める日本人の審美観は、清末の宜興陶工たちに特別な造形を作らせ、具輪珠という名の急須を誕生させます。明治9年(1876年)の『茗壺図録』に「拙にして密、樸にして雅」と讃えられたその佇まいは、技巧を超えて静謐な風情をたたえています。

太く短い注口は、湯切れの良さを叶える実用を第一に据えつつ、全体の姿を引き締めています。過剰な装飾を避け、茶を淹れるために必要十分な形に徹するその姿こそが、日本の煎茶人たちが愛した美意識に深く響くものでした。技巧を誇示せず、むしろ簡素の中に潜む静かな品格を尊ぶ心が、本品の造形にそのまま映し出されています。蓋や鈕に残る微細な手跡は、無作為のようでいて計算された陶工の手技を物語り、器肌に浮かぶわずかな包漿(ほうしょう)は、長年の茶の香気を含みつつ、静かに時の厚みを刻んでいます。本品には後々併せて製作された木箱が付属します。

w10.2 x d6.8 x h7 cm(急須本体)

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