こちらは、李氏朝鮮時代に作られた白磁の満月壺(タルハンアリ)です。その名の通り、満月を思わせる丸みのあるフォルムが特徴で、提灯壷とも呼ばれています。朝鮮時代の儒教的価値観が色濃く反映されたこの壺は、装飾を極力控え、純粋な白磁の美しさが際立っています。
柔らかく丸みを帯びた曲線が、見る者に穏やかな印象を与え、しっかりとした存在感を持ちながらも、空間に自然に馴染みます。壺全体に広がる多様な白の色調は、乳白色や青白色、時には灰白色といった微妙なニュアンスを持ち、時間とともに少しずつ変化するのも魅力の一つです。
本品には内側に水留めの修復が一箇所、高台に鎌傷や染みが見られますが、李朝時代の壺としては良好な状態を保っています。高さ38cmとコンパクトなサイズのため、茶席の床の間にも適しており、どっしりとした形状は空間に落ち着きを与えます。高台の縁にはほつれが見られますが、全体として非常に硬くしっかりとした作りです。装飾に頼らない無垢な美しさで、静かな感動を呼び起こします。