






























安土桃山時代 ヨハネとキリスト洗礼像(1573–1603CE)
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本品は、安土桃山時代に制作された木彫のヨハネ・キリスト洗礼像です。この像の構図は「バブテズマ・ノ・ヨハネ」、すなわち洗礼者ヨハネがイエスに洗礼を施す場面を描いたものでしょう。ヨハネはイエスの頭に手をそっと重ね、イエスは静かにその手を受け止めています。これはおそらく『ルカによる福音書』第3章の場面に基づくもの。そして、初期洋風版画に倣ったC字型の構成や浅浮彫も特徴的で、イエスの温かみと洗礼の神聖さがひとつながりになっています。
裏面には「沼田出土」と書かれた古紙が貼られています。群馬・沼田は戦国期にはキリシタン大名・大友氏の菩提寺が存在し、関東平野にキリスト教が根を広げた拠点のひとつとされる土地で、北国街道や足尾鉱山への道が開かれ、人々とともに信仰も流れ込んだ歴史があります。また幕府の検挙帳には沼田からキリシタンが多数出た記録もあり、いわば、この地は信仰の交差点ともいえるでしょう。
小さなサイズゆえに生活の奥深く、祭壇の脇や小さな祈りの場に置かれ、折に触れて手で触れられながら、人々の心に寄り添ってきたのでしょう。彩色はところどころ剥落しているものの、深い緑や金の名残が美しく、人物の表情や体躯に陰影を与えています。光を受け、木肌の温かみが立ち上がり、物語が聞こえてきそうな聖遺物です。抑制された表情と緩やかな動きからは、信仰とはかたちではなく、魂の状態であることが、語られているようにも思えます。ろうそくの灯りのもと、秘めやかに繰り返された夜のオラショ。異国の福音と日本の土地の交わりとを、静かに繋がれた祈りの痕跡を確かに見つけることができます。
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