













明治 グラヴュール羊歯文杯(1868–1912CE)b
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本品は、明治時代に制作されたグラヴュール技法による小振りなガラス製のカップで、開口の広い杯形の器面に、羊歯文が簡潔に彫り込まれています。ぐい呑みとして手取りの良い大きさです。胴部や高台にわずかな気泡や歪みが見られ、型吹きと仕上げの過程における手仕事の痕跡が、器物に柔らかな表情を与えています。
グラヴュールとは、ガラスの表面に刃をすべらせるようにして彫刻を施す西洋の技法で、陰影や濃淡のある陰刻表現を可能にするものです。明治維新以降、品川硝子製造所をはじめとする官営工場を通じて日本に導入され、手仕事の技として各地の職人に受け継がれていきました。本作にも、その繊細な彫り口と写実的な図案に、舶来技術を消化した職人の研鑽が見て取れます。
羊歯は、古くから日本で長寿や繁栄を象徴する吉祥文様として親しまれてきましたが、19世紀の西洋においても、「プテリドマニア(羊歯熱)」と呼ばれる熱狂的な流行を背景に、アール・ヌーヴォーやジャポニスムの文脈で好んで用いられた植物です。東西の美意識が響き合うこのモチーフは、小さな器面に刻まれてなお、その文化的厚みを失わず、簡素のうちに洗練を宿しています。
現存状態も良好で、ガラス表面に大きな欠けや割れはなく、当時の空気を穏やかに留めています。
w5.4 x d5.4 x h4.5 cm
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